映画なんか大っきらい

週1本を目標に新作映画を観てレビューしていきます。 ★が10個で満点。満点は1年に1つ出るか出ないか。 出る日を楽しみに覗いてくれると喜びます。 60年代ヨーロッパ映画,70年代アメリカ映画,ホラー/スプラッター映画などを好みます。映画にまつわるゴシップNEWSや旧作映画も随時更新

★★★★★★★★☆☆

「アメリカン・ハッスル」★8

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【あらすじ】
詐欺師アーヴィン(クリスチャン・ベイル)と、その相棒で愛人のシドニー(エイミー・アダムス)。彼らはFBI捜査官リッチー(ブラッドリー・クーパー)に逮捕されるが、無罪放免を条件におとり捜査への協力を持ち掛けられる。それは、架空のアラブ人富豪をダシに、カジノ利権に群がる政治家やマフィアを一網打尽にするというもの。アーヴィンとシドニーは、標的のカーマイン市長(ジェレミー・レナー)に近づくが、二人の仲を嫉妬(しっと)するアーヴィンの妻ロザリン(ジェニファー・ローレンス)がおとり捜査の邪魔をする。

【感想】
この映画は実際にアメリカを揺るがした政治家などの収賄スキャンダル、アブスキャム事件を基にしているそうです。事前に予備知識が必要な映画といったものではなかったし、実際、僕自身が予備知識ゼロで鑑賞したんだけれども大いに楽しめました。なるほど、こりゃアカデミー賞がっつり取るだろうと納得の映画です。

個人的には、誰もが認める演技力をもったディカプリオが「ウルフ・オブ・ウォールストリート」で、あれだけの怪演を見せつけたのだから、何がなんでも今回はディカプリオに与えるべきだと。まだ一度も取ってないなんてハリウッドの大罪だと。そう思ってるのですが、アメリカン・ハッスルを鑑賞後はこころに暗雲が広がりました。こりゃまずいぞレオ様。クリスチャン・ベイルと争うことになるとは、映画の神様もイジワルだ。

クリスチャン・ベイルの体を張った役作りはスゴい。
これが通常時のクリスチャン・ベイル
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2011年、麻薬中毒の役に挑んだクリスチャン・ベイル
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そして今回。
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これ、自前の脂肪なんですよ。
通常時からマイナス13kg減量してジャンキー。通常時に戻してリセット。今度はプラス20kg脂肪をつけてハッスル。こいつとレオ様は闘うわけだ。
残酷よ、残酷。

そしてエイミー・アダムスとジェニファー・ローレンスもグラマラスな衣装に身を包み、最高にセクシーな演技で劇を盛り上げる。ふたりの女優はもうね、他のノミネート作品は見れていないにも関わらず、こりゃ取るだろうな、と確信してしまう素晴らしさがありました。

70年代の空気感といい、ハリウッド的ゴージャス感といい、映画俳優たちの煌びやかなオーラといい、アメリカ映画を堪能した満足感で胸がいっぱいです。

一点だけ残念なことがありまして。鑑賞した回では外国人客が割合的に多かったんですね。2割、3割に届いたかもしれないくらい。で、外国人が大笑いする箇所がところどころに用意されていて、それが分からなかったんです。字幕ではわからないアメリカンジョークがいっぱい詰まってるんでしょうね。おもしろかったんですが、もっとネイティブな部分では理解出来ていないんだろうなって考えると、残念というか悔しいというか。

でもまあ、めっちゃおもしろかったよ!


最後に「アメリカン・ハッスル」が取るアカデミー賞の予想

▽主演女優賞 エイミー・アダムス
▽助演女優賞 ジェニファー・ローレンス
▽衣装デザイン賞 
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▽美術賞 ※「華麗なるギャツビー」or「アメリカン・ハッスル」

主演男優賞——あえて外しました。だって、だって、だって、レオが取るもん。

「キャプテン・フィリップス」★8

4,「キャプテン・フィリップス」
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【ストーリー】
2009年4月、ソマリア海域を航海中のコンテナ船、マークス・アラバマ号を海賊が襲撃。武器を所持していた4人の海賊に、武装していなかったアラバマ号はあっという間に占拠されてしまう。船長のリチャード・フィリップス(トム・ハンクス)は、20人の乗組員を自由にしてもらう代わりに自らが海賊の人質となり……。
【ピックアップ】
トム・ハンクスってもう漂流してるイメージしかないので予告編みても続編かと思った。まだ海いるのかトム。現在アメリカでは1位「ゼロ・グラビティ」2位にこの「キャプテン・フィリップス」がつけているそうで、どちらも主人公が孤立無援状態で苦しみ続ける系に寄ってたかってる感じがアメリカらしくていいね。やっぱり苦しんでる人を金払ってでも観たい。そういう汚れた人がね、地球上にいっぱいいるってのがなんだかね、心の拠り所ですよ。
【感想】
もう既に12月も半ばとなってしまったのですが、先月11月分の課題映画が3本止まりとなっておりましたので、こちらを鑑賞してきました。補習です。12月に関しましてはどこかで1日バルト9ひきこもり作戦で消化していく予定でございます。
同時刻にとなりでは「ゼロ・グラビティ」を上映しておりまして、上映開始までの時間、ほんとはそっちを観たいのに…と、やきもきしましたが、いざ上映がはじまってみれば「なんや!トムハンクス最高やないか!」なんてうきうきウォッチングの大満足だったのです。
2013年は映画あたり年と言われてますが「キャプテン・フィリップス」も2013年の映画を語るうえでマストな一本であるのは間違いありません。海外では本年度ベスト!の声も非常に多い作品ですが日本ではそれほど騒がれていないようで、良作に埋もれてしまってスルーされる確率が高そうなこの作品こそに★10の満点評価を与えるべきではないかとギリギリまで迷ったほどです。

ご存知のかたも多いかと思いますがこの作品は実話をもとに製作されました。
2009年に海賊に襲われたアラバマ号のフィリップス船長救出劇なんですね。
実話ですから内容も知っているわけです。乗組員全員が無事であったこと。海賊たちは米国に射殺されたこと。知らなかった人にとってはあまりにさらりとネタバレしちゃったと感じられたかもしれませんが、こういうのはネタバレとは言わないのでお許しを。むしろ予備知識をちゃんと入れてから鑑賞してほしいのでもう少しだけ掘り下げます。日本人にも関係した話ですし、映画の中では触れられない部分ですのでもう少しおつきあいください。

海賊と聞いてどんなイメージをしますか?
パイレーツオブカリビアンのような海賊船やワンピースのような世界を思い浮かべる人が多いはずです。そもそも現代に海賊がいること自体に驚いた人もまた多いのではないでしょうか。

現代の海賊の特徴は主に3つ。

①乗り物は「小型ボート」
②船員を人質にとり身代金を狙う相手は「国」
③海賊ビジネスの構成員は主に「漁師」

骸骨マークの「かっこいい」イメージとは随分とかけ離れた海賊の姿ですが、これが現実です。ところで何故ソマリア海域の「漁師」が「海賊」となってしまったのか。この理由が日本人にも関係してくる話なのですが、ソマリア海域は魚が豊富な海域で主に「マグロ」がたくさん穫れるんですね。この豊富な金脈を見つけて各方面から次々と大型漁船がやってきて、穫りまくったんです。日本だってもちろん荒らしました。それによってソマリアの漁師たちは食っていくことが困難になったんですね。ソマリア人からしたら「先に奪ったのはお前らだろ」と言いたくもなりますって。
じゃあどうするかって考えた末に「海賊」の道を選んだわけですね。
彼ら「漁師」は雇われです。元締めがいてビジネスとして「海賊」となり私たちサラリーのように働いています。
一見して野蛮に見えるんですけれども、彼らも血が流れるのは望んでいないんです。サラリーマンですからね。ですから人質をとって「国」相手に金を要求しているんですね。その方が儲かるってこともあるんですけど。映画でも海賊たちの第一声が「ノーアルカイダ!ジャストビジネス!」と叫んでいます。ちなみに相場は欧米相手だと300万ドルでイスラム圏相手だと150万ドルが相場らしいです。今回の事件ではアメリカ相手で1000万ドルを要求しております。余談ですがソマリアの隣国はイエメンでアルカイダの巣窟です。ソマリア人としてはイエメンの野蛮さと一緒ではないというプライドがあるのでしょう。それでも調べてみると毎年2万人のソマリア人がイエメンに逃げてるらしく、この付近の情勢を知ると辛いものがあります。

あえて乱暴な言い方をしますが、今年一度でも「マグロ」を口にしたのでしたらこの事実も一緒に咀嚼してください。わたしたちはマグロの命の他にも「奪って」得ています。

前置きが長くなりましたがこの映画のスゴい点

①ホンモノにしか見えない「海賊」たち
②トムハンクスは映画だと知らされていなかったのではないか

とにかくこの映画は役者がスゴい。僕は18歳の頃は役者になりたくて俳優養成所に入っていたんですね。それで夢破れちゃって今こうして完全にひねくれてしまってるんですよ。いっちばんたちの悪い部類の人間なもんで演技に関しては誉めない。誉めたら負けだとすら思ってる。トムハンクスの演技力なんて誰もが認める演技力ですよね。にも関わらず、にも関わらず「フォレストガンプ」ですら誉めなかったし今後も誉めないつもりだったのですが、こ・れ・は・べ・つ・。
「海賊」が持っている銃ですけどね、僕の見解ではあれ実弾入ってたんじゃねーかな。
実弾入った銃でガチで脅されたんですよトムハンクスは。そう言いたくもなる演技力ですよ。実際ね、変な真似したら殺すぞ!と額に銃口押し付けられるんですけど、銃を額から離したときにくっきり額に銃口の跡がついちゃうんですよ。どんだけ強く銃口押し付けてるんだと。
そして最後に米軍に救出されたトムハンクスの緊張から緩和へ移ろいでゆく姿といったら、演技部門の生涯ベスト級の素晴らしいシーンでした。

内容を全て把握した状態で鑑賞してもなお、この映画が2013年ベスト級と言えるのはこの演技に対してです。殺されないと知っているにも関わらず、観客に息をすることも許さないほど緊張させ続けた「海賊」たち。そして(おそらくは)騙され続けたトムハンクス。もうとにかく最後は最高だから観て!としか言えないんですけど、ほんとにスゴいんで是非観てください。

それから最後の最後に一点だけ。
この映画は役者たちの目に注目してほしいです。瞬きを一切しないんですよ。
たぶん監督が計画的に瞬きをカットしたんでしょうけれども、それがスゴい効果的なんです。役者が瞬きをしないと、こちらも瞬きが出来なくなります。そうする事で観客に緊張感を与え続けるという手法を取ってるんだと思います。気がついたのは後半の方ですので前半は意識して数えてませんでした。ググっても指摘が見つかりませんでしたので前半めっちゃ瞬きしてるかもしれません。瞬きの量が前半普通でしたら反論ください。

「魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語」★8

なるべく核心には触れないよう注意しておりますが、鑑賞前の方はご遠慮ください。


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【ストーリー】
まどかへの想いを果たせぬままに取り残された魔法少女・暁美ほむらは、彼女の残した世界でひとり戦い続ける。懐かしいあの笑顔と再びめぐり合うことを夢見て-
【鑑賞前】
今月一番期待しているのが魔法少女まどか☆マギカの完全新作。本当に今月観られるんだね。まどかに会えるんだね。新しい魔法少女「百江なぎさ」も気になる気になる。正直に言うとね、完成度がどうだとか全くもってどうでもいい。まどかに会えるだけでいい。いやマミ先輩も…。あーあ、僕もはやく概念になりてーなー。
【感想】
さて、今回も池袋サンシャインのレイトショーで鑑賞してきました。
客のいりは、スゴい!
雨降る火曜の夜だってのに150名いってるかな。男女比5:5。
客層は触れませんが想像通り。

劇中ずっとトイレ我慢してて、映画おわってすぐにトイレに駆け込むとね、両脇にメガネ男子がきて僕を挟んだ。メガネとメガネに挟まれたんだけど、僕ももともとメガネだから特になにか起こったわけじゃないんだけど、メガネ3本並んだの。両脇のメガネはおともだち同士なんだけども。
少し間を置いてから右側の子がひとりごとのように天を仰いで「やっと逢えたね」ってつぶやいて、ちょっとビクッてなって。
と思ったら左側の子がこれまた天を仰いで「…ああ。やっとだ」ってつぶやいて。
つられて僕も天を仰いで小便しました。

なんだろこれ。

パンフレットも凝った作りでして、こういうの作るお仕事してる立場から言わせてもらうと売値1000円でこれほどの加工施すとほとんど利益出ません。利益度外視の【初回版】パンフは今のうちにGETしておこう。いい仕事してるパンフなのでこれは是非購入しておきたいところ。

観賞後にお読みください!と注意書きが書かれたシールで封されていましたが構わず封切って鑑賞前に熟読。それほど重要な部分は書いていないので個人的には鑑賞前に目を通した方がいい内容だと感じますね。ある程度の知識をいれておいた方が細部に目が届きますので僕は読んでおいてむしろよかった。


結論から言うとね。
最高におもしろい。

もともと「まどかマギカ」を好きになったのは、内容よりもテキスタイルを切り貼りした魅せるデザインが気に入ったからだったんだけど、前半部分ではこのテキスタイルを魅せる魅せる。額縁にいれて飾っておきたいカットばかりがこれでもかと続き、上映開始10分しないうちにチケット代還元できた。ダリも嫉妬でヒゲ禿げるレベル。

それに主要キャラ5人の魔法少女全員をしっかり魅力的に目立たせていてね、これまで僕は「鹿目まどか」「巴マミ」が好きだったんですが「暁美ほむら」「美樹さやか」「佐倉杏子」それぞれの魅力に今回は気付かされて、ついに順位をつけられない状態になってます。

戦闘シーンもかっこ良さがパワーアップしておりまして、すこしネタバレしますけど「巴マミ」と「暁美ほむら」がガチ対決するんです、今回。
この対決は武器もいいわテンポもいいわアングルもいいわでデュフフフフでした。


めっちゃ言いたいけれど言えない核心の部分、映画のなかでいっちばん盛り上がるところなんてね、エヴァ破のラスト(サードインパクト)級の高揚感が襲ってくる。


濁して言うと、ほむらが覚醒するんだけど、このほむら覚醒がやばい。
ここまでは満点でした。

★2つ減らした理由はちょっとラスト15分ほどが蛇足だったかなと。
「世界」のレイヤーを重ねすぎていて、せっかく高揚した気持ちが「世界」切り替えることによって一旦リセットされちゃうんですね。さっきのレイヤーで最高に昂ってたんだぜ?世界戻してそっち見せろよ!ってなる。なんならほむら覚醒でぶつ切りでもよかった。そのあとのことは観客に丸投げでもよかった。監督は丁寧なんですよ。これは松本人志も見習うべきですけど劇中できゅうべえに説明させることで違和感なく物語を補完できるようちゃんと練っている。うまいなあと思うわけです。でも今回はちょっと丁寧すぎたんじゃないかなあと、もう少し観客の思考レベルを信頼してみてもよかったのではないかという思いが拭いきれなかった。
こんなことを突っ込んでる僕の思考のほうが蛇足っちゃ蛇足なんでしょうけどね。

それとこれは完全に僕が悪いんですけども、僕はつい「震災以後の世界」といいますか、あの悲劇が起こってしまって、それを僕らは巻き戻したくてもできるわけなくて、受け入れなきゃいけない。じゃあ震災の傷を僕らはどうやって乗りこえて、なにをもって救いとするのか、みたいな震災以後の絶望と希望を魔法少女たちの戦いをとおして感じたかったというのがあったんです。おまえが勝手に考えろですよ。魔法少女たちに、もっといえば「まどかはおれの神」と祈り、震災以後を託そうとした自分に失望したのであって、映画はわるくないんですけども、小さな失望を心に残してしまったんです。


ほんとうはあれこれ考えずたのしめる映画です。
とにかく魅せます!映像美に痺れます!
今いちばん劇場でみてほしい作品「魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語」
オススメします。


「地獄でなぜ悪い」★8

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【ストーリー】
とある事情から、激しく対立する武藤(國村隼)と池上(堤真一)。そんな中、武藤は娘であるミツコ(二階堂ふみ)の映画デビューを実現させるべく、自らプロデューサーとなってミツコ主演作の製作に乗り出すことに。あるきっかけで映画監督に間違えられた公次(星野源)のもとで撮影が始まるが、困り果てた彼は映画マニアの平田(長谷川博己)に演出の代理を頼み込む。そこへライバルである武藤の娘だと知りつつもミツコのことが気になっている池上が絡んできたことで、思いも寄らぬ事件が起きてしまう。
【鑑賞前口上】
園子温ですよ園子温。今もっとも期待できる日本の映画監督と言えばですよ。
でも前作「希望の国」の出来はねぇ、決して悪い作品ではなかったんですけどね、なんだかみんな期待裏切られた感ありましたよね。あんただったら被爆した福島住人が全員血吐いてのたうち回ってね、そんでゾンビになって浜通り歩き回っちゃうっていう不謹慎にも程がある構図を撮っちゃうんだろうって期待しちゃいましたよね。散々こっちにゃ神楽坂恵のエロ画くれるもんだからその気になっちゃってたのにさ、お前が結婚するんかい!ってね。そんでまともな映画でしょ。今回の新作なんて神楽坂恵を引っ込めちゃってるじゃねえかってね。これはもう意地でも鑑賞しに行って出来が悪かったらその場にうんこして帰ってこようかなって思ってるところですよ。

【感想】
映画バカの映画バカによる映画バカのための映画でしたね。映画に必要なのは1に映画愛で2に映画愛、3から10まで映画愛という意味を一言で表すことを何と言う?という問いに「地獄でなぜ悪い」と回答したわけです。ストーリーは映画開始0秒からテンポ良すぎて涙がぽろり。まるで「愛のむきだし」をぎゅぎゅっと凝縮したような濃度でね、あの頃ぼくたちを虜にした満島ひかりと2013年現在の二階堂ふみが重なるんです。日本映画の歴史に残る二階堂ふみのキスシーンは絶対に観ていただきたい。ちんぽが縮むほど痛々しいのに、その瞬間が永遠になればいいと願わずにはいられない、柔らかく鋭いそのキスを。二階堂ふみはヤバい。僕はヤバいという表現は好きじゃないんですよ。その感動を言語化出来ない人しか使わない言葉だから。しかしね、二階堂ふみはヤバい。鑑賞前はね、神楽坂恵を引っ込めてしまった園子温を僕は恨んだんですよ。ふざけんじゃねーぞと。結婚して女房なったら急に私物化かいと。神楽坂恵はソーシャルじゃないんかと。女房にしちまったもんを取り消せとは言わんよ、そこまでは求めない。しかし店じまいとは子温も所詮人の子かと。ほんとうに申し訳ございませんでした。ここに深くお詫びします。二階堂ふみという素晴らしい素材を完璧に仕上げてみせてくれるなんて想像出来ませんでした。いやたしかに「ヒミズ」も良かった。けれどここまで見せてくれますか。子温さま。
追伸、今回友情出演という形ではありましたが神楽坂恵を露出していただいてありがとうございました。願わくば、女房となった神楽坂恵ではありますが、引き続きおっぱいを拝ませていただけますと幸いです。

しかしヤバいのはなにも二階堂ふみに限った話でなく、國村隼も堤真一も長谷川博己も星野源も友近も配置されたキャストみなさんがファンタジスタ。役者たちが映画のなかで映画を楽しんでいて感動的です。でんでんや岩井志麻子や水道橋博士が友情出演という形で名を連ねているというのもまた園子温監督らしくもありニヤリとさせていただきました。

映画一番の盛り上がりを見せるクライマックス。血飛沫に混じって腕が足が首が飛び交うヤクザ抗争の映像には近年の北野武「アウトレイジ」から果ては懐かしの「ブレインデッド」に至るまで映画バカたちの足跡をたっぷりと堪能できましたね。左手にマシンガン、右手に35mmフィルム、Take2なき一発撮り。スタートの合図が鳴り響けば、映画狂人たちのターン。いや、ゆりかごから墓場まで、ずっと映画狂人僕らのターン。打ちまくり回し続ける不屈の魂。一体これはなんだ。夢を見てるのか。そうだ夢だ。夢だけ見ててなにが悪い。例えそれが地獄だろうと。地獄でなぜ悪いのだ。若者たちよ武器をとれ!愛を叫べ!フィルムを回せ!

最高のコメディ映画が誕生しましたね。映画万歳!
文句なしの超オススメ映画です。週末だ!映画館へ急げー!

「パシフィックリム」★8

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話題のロボットvs怪獣映画「パシフィックリム」を鑑賞。
 
ギレルモ・デル・トロ監督の「ロボット」「怪獣」なにより「日本」愛がたっぷりと詰まっていて終始鳥肌立ちっぱなしの二時間でした。
 
監督が影響受けた映画を聞かれざっと答えた映画が下記のとおり
「マタンゴ」「鬼婆」「薮の中の黒猫」「ゴジラ」「ガメラ」「フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)」「ウルトラマン」「マグマ大使」「キャプテンウルトラ」「鉄腕アトム」「リボンの騎士」「黄金バッド」「パトレイバー」
言うまでもないと思ったのでしょう、ギレルモ監督の口から直接名前は挙げられませんでしたが他にも「マジンガーZ」「超時空要塞マクロス」「ガンダム」「エヴァンゲリオン」が色濃く出てます。

脚本そのものはこれといって語りたくなるほどのものでもなく、「インデペンデンスデイ」とか「アルマゲドン」とか「ディープインパクト」とか、エンドロール観ながら思わず「U.S.A!!」「U.S.A!!」と合唱しちゃう系と言えばもうイメージはしやすいと思います。が!!もうそういうことじゃないんですよ!この面白さは!

ロボットがね、ロケットパンチを怪獣にかますんですよ!必殺技「エルボーロケット」でぶん殴るんですね。このエルボーロケット一発だけで1800円の価値があるのだと言い切れるかっこよさがあるんです。間合いといいね、角度といいね、直前の溜めといいね、完璧なんですよね。これはもう「インデペンデンスデイ」でウィルスミスがエイリアンをU.F.Oから引き摺りだして素手でぶん殴るのありますね、僕はあれ映画の歴史のなかでもロッキーを超える「かっこいい殴り方」だと思ってるんですけどね、あれと並ぶかっこ良さですよ。昔と比べて今はますます人を殴るなんて許されない時代ですし暴力反対ですよ僕もね、でもそういうあたりまえの正論言ってる人をね、「暴力賛成!」と心折れるまで殴り続けてみたいとは思いますよね。まあそれは別のお話ですけれども。ぶん殴るなんて社会では許されていないからこそ、せめて映画の中では渾身の一撃を見たいと男の子は期待しているわけですよ。女性には分かりづらい感情でしょうかね。あるいは男の子を育てている、育てた経験がある女性なら男の子が分かるかもしれませんね。もう3歳あたりから破壊の喜びを全力で感じて遊びますからね。砂あそびの〆は破壊ですし積み木を積むのだって〆の破壊のためですよ。パパなんて怪獣に扮した時がいちばん喜ぶんですよ。パパはいらない、思う存分ぶん殴っても許される肉塊が欲しいわけですよ。相手を仕留めてこそ幸ってのは古代から受け継いだ本能ですからね。そういった男の魂的な壷を満たす、満ち溢れる一発だったといえば1800円の価値以上のものだって分かってもらえるでしょうか。
他にもプラズマ砲や原子力を使いまくるのもいいですね。反原発運動している市民団体にイェーガー(ロボットの呼び名,ドイツ語で狩人の意)に乗り込んで突撃したくもなるのですが、肝心のところは「ソード」で怪獣を真っぷたつというのも「男に生まれてよかったー!!」と思わずガッツポーズしてしまいますよ。

それとなんといってもロボットの質感がいいんですね。エンドロールでは黒く輝く削り出しボディのロボットが出てくるんですけど、この光沢が美しいんです。最先端技術を駆使して作られた感がスゴい。iPhoneのアルミ削り出しボディを美しいといって騒いでる連中が身の回りにもおりますね。せめてネットの中だけにしとけばいいのにこの「ギーク」なやつらは現実でもドヤっと見せつけてきますね。そんな「ギーク」たちへむけての「ナード」からのレクイエム的な映像ですよ。iPhone片手に呆然と立ち尽くすでしょうね。そんなわけで最後まで楽しめるように作られているんですが、本編のロボットは全然そんな感じじゃないんですよ。かなりの年季が入っていてね、ところどころ錆びてるんです。白のペンキも剥がれていたりね。こんなにリアリティをもったロボットは生まれて初めて観ましたね。ないよ、ないよ、ないとは分かってるんだけどもね、「もしかしたらこのロボットは本当に作られてるかも、可能性はゼロに近いよ。でもゼロではないよね」と思わせてしまう説得力を持っているんです。このロボットの質感はぜひ観てほしいポイントです。

観てほしい層は30代〜40代のロボット大好きなおっさん。それと小・中・高校生の男の子がいらっしゃる方は必ずお子さんに観せてあげるように。これは日本人の義務といっても過言ではありません。 
日本男児よ 立ち上がれ!